毛利さんとの対談


(池田)生徒たちから、ぜひ毛利さんに伝えて欲しいという伝言を預かってきています。
「これまでは学園はウィルソン山天文台との交信などを通して、地球から宇宙を見るという視点をずっと持ってきました。今回、毛利さんにアースカムの機会を与えていただいて、今度は宇宙から地球の私達を客観的に見るという新しい視点を与えていただきました。本当に感謝しております」ということでした。

(毛利)そうですか。実は(関西)創価高校のHPをヒューストンで見ていまして、すご いなと思ったのは、HPそれ自身が非常に優れているのですけれども、他の高校近くの中学校、四国の中学校も巻き込んでいったというのと、もう一つ、ものすごくおもしろいなと思ったのは、自分達が光を出して、その反射をアースカムで捉えるというのは世界中で初めての試みなんです。

(池田)ありがとうございます。残念ながらMETがずれておりまして、写真が少しずれ てしまったんです。そのために私達が実験を行った地点そのものが写真のなかに納まらなかったんで、確認できなかったという非常に残念な思いをしたんです。103周目ですのでハイビジョンのカメラがその時間、回っていたということを確認しておりますので、そのデータを後で送っていただきまして、ハイビジョン映像上で確認できるかどうか確かめたいと思っています。ところで、毛利さんが環境問題について強く考えられるようになったのは、いつ頃からのことなんでしょうか。

(毛利)元々自然が好きでした。私が小学校4年生から6年生の頃、経済高度成長期で、 私が余市町という非常に田舎の風光明媚な(笑い)所に住んでいたんですね。近くにあったウイスキー工場が私の遊び場だったんですが、あるときその工場に流れる川が急に汚れはじめたんです。ヘドロがたまって、よくフナを釣って遊んでいたんですけれども、フナの死骸が浮かびはじめたんです。これは何だろうと思ったんですね。
それともう一つ、自分の環境問題について大きなきっかけになったのは、大学の研究者で、核融合という将来の人類のエネルギーを担うという仕事をしていたんですね。そのときに、外国出張して北海道に帰ってくると、千歳空港から札幌に向かうあいだ、異常に噴煙が多いんです。どうしてこんなに噴煙が多いんだろうしかも道路には、轍が掘れているんです。それはとりもなおさず、スパイクタイヤによってアスファルトの表面が削れて粉塵として舞い上がっていたんですね。当時アスファルト粉塵だと癌になるんではないかと新聞に書かれていましたね。これはちょっと大きな問題になりそうだと思いまして、たまたま核融合の研究をしていまして微量分析の装置が私達の研究室にあったものですから、プロジェクトを組みまして、その当時最も進んだ機器を駆使してまずどのくらいの粉塵がどういう分布をしているんだろうということを調べてみたんです。
そのあとすぐ宇宙飛行士になりましたけど、その環境問題に対する興味はずっと持っていてやはりこれからは地域で見るのと同時に、グローバルで見る必要があるという認識にかられて、今回宇宙から地球をよく見たいというのにつながっていました。

(池田)生徒たちから毛利さんにぜひ質問をしたいと聞いてきたことがありまして、「人間というのはこれまでちっぽけな存在であると思ってきました。ところが今回アースカムに参加して、スペースシャトルを打ち上げたり、宇宙ステーションを作ったり、また広い宇宙を自分たちの頭で考えることが出来る。そいうことで改めて人間とは偉大な存在であり、無限の可能性を持っているんだなということに気がつきました。毛利さんは宇宙に出られて人間の存在についてどのように考えられましたか。」ということでした。

(毛利)確かに宇宙に出ると、地球は丸くて浮いていますよね。しかし人間の存在というのは小さくて人間自身は見えてこないんです。見えるのは森林と海に珊瑚礁が見える。実際に宇宙から見てみて、生きもというのはその2つだけなんです。でも、森林をよく見てみると、森林が随分食い荒らされているような形で、特に河口付近、それから山の裾野付近がよくわかります。これは人間という存在が森林を食い荒らしているんだろう。確かに人間はちっぽけな存在で、直接は見えないんですけれども、科学技術の力で地球がそもそも持っている自然を随分変えているんだなということが目の当たりに見えるんです。それでさっきの「ちっぽけな存在」ということなんですけれども、そうやってちっぽけな人間でも集まって、科学技術が急に200年前から進歩してきて、それによって急速な環境変化があった。それ以外に人口の問題ですね。人間の数が明らかに18世紀から20世紀にかけて指数関数的に増えていってますよね。地球の環境変化というのは人間の数が増えたことによって明らかに生じているわけです。あと、もう少し客観的に、森林とか海とかばかりじゃなくて、大気、二酸化炭素の濃度、温度などが、200年前に比べて明らかに上昇している。それがどういうふうになっていくんだろうというのが、今後どうしても解決していかなくてはいけない問題だと思ったんです。
もう一つ。さきほどの「小さな存在」に戻りますけれども、全体を見回してみたときに、まだまだきれいな海とか、森林もまだまだ残されていますし、いずれにしてもこれがなくなったら私たち人類自身も絶滅してしまいますよね。そういう環境問題、人間が今まで進んできたような、しかもこれから絶滅しないで住んでいけるだろう環境というのは、やはり次の世代の人が一番敏感に感じ取って、それを自分自身で変えていってもらわないといけない。誰にも任せられないですね。よく前に「宇宙船・地球号」という言葉が言われましたけれども、若い自身が操縦していかないといけないんですね。そういう人達に影響をできるだけ与えたいなと思って、今回のミッションのときに、色々な人と話をしたときに問題提起をさせていただいたんです。

(司会)生命についての毛利さんのメッセージ。「この地球には、まだ破壊されていない森林が残っている。環境との調和を保つために若い君達に必要なものは地球および宇宙をも視野に入れた透明で強い意思と、生命全体を考えるやさしさであると思う」と。素晴らしいこれはメッセージであると感銘いたしました。

(毛利)ありがとうございます。あれは自分ですごく自分で考えて書いたものなんです。最初の一節は、私達自身特に21世紀に生きる若い人達というのは、もう、一つの国とかではなくて地球全体を考える。今の時点でスケールのさらに大きいものを考えていくと、初めて今の世界のことが実現するということで、宇宙をも視野に入れて。
しかも「透明で」といったのは、宇宙から見ると非常にいろんなものがクリアに見えるんですよ。これから他の国の人達と一緒に何かやっていくとなれば、自分の立場をいつも透明に見ないといけない。こっちがぼやーっとしているとそれは通じないんですね。そのためにまず透明で外から影響されない個人の意思を持っていないといけない。
それと「生命全体を考えた優しい心」の方ですが、これは「個」も実は「個」一人で生きているんではない。宇宙から見た視点では、すべての地球にいる生命が関係があるということがわかっていますよね。ですから「個」を強く出すと同時に全体に対して、「他人=他の生物」に対して思いやりがあってはじめて地球全体がうまくいくという形で、今度は地球全体を見渡して生命全体に対する思いやり、優しさということで表現をしたんです。

(池田)毛利さんの次の夢はどういうもの何ですか?

(毛利)次の夢はですね、自分が子供のころ持っていた夢を実現したわけですね。その夢を他の人に持てるように手伝うことですね。それが夢です。それがずーっとずーっとつながっていくことになると思います。

(司会)宇宙ステーションも当然視野に入っている訳ですね。

(毛利)ええ。とは言っても、適材適所といいますか、例えば宇宙ステーションの建設に関してはそれに合った年齢の技術的に優れた人をやはり乗せるべきだと思うんですね。で、私達は邪魔をしないでそういう人達をサポートしてあげたい。
しかし、科学者としては、特に宇宙での経験が豊富ですから、それを有意義に使ってもらえると他の人よりはきっといい仕事ができると考えています。長期間滞在して宇宙実験をするというのは、まだまだ可能性はあると思いますので、その可能性は追求していきたいと思っています。

(池田)今日は本当にありがとうございました。

(毛利)でも、すごくよくやったよね、関西創価の生徒達。

(池田)本当にお忙しいなかありがとうございました。

(毛利)こちらこそありがとうございました。

(池田)ご健闘を祈っております。

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毛利宇宙飛行士と池田勝利先生

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